経口摂取リハビリテーションとは

人間にとって、「食べる」という行為は、生命維持に必須の条件であり、
また、生活を楽しむ、という面においても大きな意味を持ちます。
味わう、コミュニケーションを図るということは、人が幸せな人生を送る上で欠かせないものです。

普段、何気なく「食べる」ことを行っているわたしたちですが、
この行為には、一連の機能と運動が関係しています。
脳には摂食中枢があり、この指示により、口や喉を動かし、水分や食物を口に取り込み、胃に送ります。
この一連の機能と運動を「摂食・嚥下運動」といいます。

しかし、この「摂食・嚥下機能」に障害が生じることがあり、食物を飲み込む際、
気管に入ってしまったり、飲み込むことができずに、喉に留まってしまうという症状が見られることがあります。
原因としては、脳卒中などの脳の障害、パーキンソン病といった神経・筋肉の疾患、
または、舌・咽頭・喉頭癌などが挙げられます。

摂食・嚥下障害になると、栄養の摂取不可や脱水、肺炎や窒息等の生命を脅かす危険性が生じます。
また、食べる楽しみが失われ、QOLの維持が不可能になります。

経口摂取リハビリテーションは、このような疾患をもつ患者が、
安全に、また楽しく生活するために、再び自分の口から食物を摂り入れられるよう、
食事や栄養摂取の方法を確立することを目指しています。

嚥下訓練食とは

リハビリの基本となるのは嚥下訓練食です。
嚥下訓練食は、嚥下運動の各段階(口腔期・咽頭期・食道期)に応じて準備されます。

1:口腔期障害
  咀嚼や食塊形成の障害を合併していることもあり、固形物は摂取できません。
  訓練食は、おもに液体や低粘度のペースト状のものになります。

2:咽頭期障害
  この段階の障害は、誤嚥の危険性があります。
  高粘度のペースト状の食物、たとえば、ヨーグルトやゼリーなどから摂取訓練を行います。

3:食道期障害
  一度に大量の食物が食道に入ると、逆流し誤嚥を引き起こす危険性があります。
  この障害のリハビリでは、低粘度の食品を、時間をかけて少量ずつ摂取していきます。

経口摂取リハビリ時の姿勢

リハビリを行う際、姿勢の調整は重要です。
誤嚥の危険がある患者の場合、30度の仰臥位から訓練を行います。
この時、頸部を前屈させなければなりません。
その後、摂食状況や障害の状態を確認しながら、徐々に角度を上げていきます。