ピロリ菌とは

胃に感染、生息するらせん型の細菌のことで、正確にはヘリコバクター・ピロリといいます。
長年にわたり、細菌が存在することができないと言われてきた胃の中で、生息可能なのは、
胃内部の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、そのアンモニアで酸を中和するからです。

現在では、このピロリ菌が、胃炎や胃・十二指腸潰瘍、胃癌等と密接な関係があることが分かっています。
日本人は特にこのピロリ菌の感染率が高く、50%とも80%とも言われています。

ピロリ菌の感染経路

ピロリ菌の感染経路はおもに、経口感染とされています。
胃に生息定着することから、飲み水や食べ物を通して感染すると想定されています。

ピロリ菌と疾病との関係

胃炎

このヘリコバクター・ピロリに感染すると、ほとんどの場合、胃炎を引き起こされます。
これは、胃壁に取り付いたピロリ菌が、粘膜の分泌を弱まらせ、胃壁を傷付けるためです。
症状は軽く、胸やけやむかつきがあったり、軽い胃痛がある程度です。
下痢を発症することもあります。
しかし、時に、確率的にはわずかですが、急性胃粘膜病変を発症する患者もいますので注意が必要です。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃にピロリ菌が定着した陽性者は、高い頻度で、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を発症します。
その確率はピロリ菌罹患者の2~5%です。
これは、慢性的に、ピロリ菌が胃壁を弱め、粘液の分泌作用を弱まらせるからです。
ピロリ菌殺菌のために、胃壁に白血球が集中することで、胃粘膜の炎症が生じるからです。

各潰瘍患者別に割合をみると、胃潰瘍患者の約90%、十二指腸潰瘍患者のほぼ100%がピロリ菌罹患者です。
潰瘍の症状自体は、薬剤投与治療で回復しますが、ピロリ菌罹患者の場合は、再び潰瘍を再発する確率が非常に高く、
除菌治療が勧められます。
ピロリ菌除菌は抗生物質とプロトンポンプ阻害薬(PPI)を組み合わせて行われ、
除菌後は約90%の割合で胃内のピロリ菌が死滅、陰性となります。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍の再発防止のためには、正しくピロリ菌除菌をしなければなりません。

胃癌

長年の研究結果から、ヘリコバクター・ピロリと胃癌の発症には深い関係があることが明らかとなっています。
ピロリ菌陽性者は陰性者と比較すると、6~22倍の確率で胃癌を発症すると言われています。
また、ピロリ菌感染率の高い地域では、胃癌の発症率も高くなっています。
胃癌患者のうち、90%以上はピロリ菌罹患者です。
これらの点から見ても、ヘリコバクター・ピロリは胃癌の発症の深い要因となっているのです。
1994年、WHOにおいて、ヘリコバクター・ピロリは胃癌の発癌因子と指定されています。